ご家族向け
夜間の急変、救急車を呼ぶ?在宅の判断目安
生命に関わりそうなら119番が優先です。救急要請と在宅医への連絡の使い分けを、症状の表で整理しました。
夜間に体調が変わったとき、いちばん大切なのは「迷ったら119番」です。生命に関わりそうな症状であれば、在宅医への連絡を待つ必要はありません。救急要請と在宅医への連絡を同時に行っていただいても構いません。
- 意識・呼吸・麻痺・強い胸痛・大量出血は119番が優先です
- 発熱、食欲低下、むくみ、便秘など経過を見て判断する変化は在宅医へご相談ください
- 連絡の前に症状・経過・バイタル・行った対応・ご希望を整理すると早く進みます
- オンコールは電話でご相談いただける体制です(主治医への直通や訪問をお約束するものではありません)
迷うほど緊急性が高いと感じたときは119番へ
呼びかけに反応しない/息が苦しい/突然ろれつが回らない、手足が動かない/胸が締め付けられるような強い痛み/大量出血、吐血、下血。迷うほど緊急性が高いと感じる場合は、患者さんの安全を最優先に救急要請をしてください。
119番へ発信結論:迷ったときはどうすればよいですか?
在宅療養では、「これは救急車を呼ぶ場面なのか、朝まで待ってよいのか」という判断をご家族が担う場面があります。この判断は、医療者でも迷うことがあります。
そこで、考え方をひとつに絞ります。生命に関わりそうだと感じたら119番。迷うレベルなら、救急要請と在宅医への連絡を同時に行う。この原則をあらかじめ決めておくと、その場で迷う時間を減らせます。順番を気にして時間を使うことが、いちばん避けたい状況です。
救急要請をしたあとで当院へお知らせいただければ、搬送先へ経過の情報を引き継ぐことができます。「呼んでしまってよかったのか」を後から気にされる必要はありません。
すぐに救急要請(119番)を検討する症状
次のような症状は、一般に救急要請が優先されるとされています。当院でも、施設・ご家族向けの資料で同じ目安をお伝えしています。
| 症状 | 伝えるとよい情報 |
|---|---|
| 意識がもうろうとしている、呼びかけへの反応が悪い | いつからか、可能なら血糖値、持病 |
| 息が苦しく会話ができない、酸素飽和度が下がったまま戻らない | 酸素飽和度、呼吸の回数、酸素の流量、痰の様子 |
| 胸が締めつけられるような強い痛み(冷汗・顔色不良を伴う) | 痛み始めた時刻、痛みの性質、持病 |
| 突然ろれつが回らない、片側の手足が動かない | 最後にふだんどおりだった時刻、抗凝固薬の内服 |
| けいれんが続く、または繰り返す | 持続した時間、けがの有無、持病 |
| 転倒して頭を打ち、そのあと意識の様子が変わった | 打った部位、意識の様子、抗凝固薬・抗血小板薬の内服 |
| 吐血、下血、止まらない出血 | 出血量の目安、血圧、脈拍 |
| 高熱に加えて血圧が下がり、ぐったりしている | 体温、血圧、尿量、意識の様子 |
| 食べ物を詰まらせ、顔色が悪く呼吸が苦しい | 詰まらせた内容、時刻、吸引や背部叩打への反応 |
| 薬や食品のあとに全身の発疹・呼吸苦が出た | 原因と思われるもの、始まった時刻、症状 |
| 急に激しい腹痛が出た(冷汗を伴う) | 始まった時刻、嘔吐、下血の有無 |
| 糖尿病があり、血糖の異常で意識が悪い | 血糖値、内服薬やインスリン、食事の量 |
| 尿がほとんど出ず、血圧が下がり意識も変わってきた | 最後の排尿、尿量、バイタル、経過 |
※ 2026年8月時点の一般的な目安であり、個別の診断を示すものではありません。表にない症状でも、緊急性が高いと感じたときは119番を優先してください。
まず在宅医へ相談することが多い状況
一方で、次のような変化は、経過とバイタルを確認したうえで判断することが多い場面です。在宅医への連絡が最初の選択肢になります。ただし、いずれもぐったりしている、血圧が下がっている、呼吸が苦しいといった様子があれば、救急要請の判断に切り替わります。
| 状況 | 確認しておきたいこと |
|---|---|
| 37℃台の微熱が続く | 体温の推移、水分と食事の量、咳・尿・傷の状態 |
| 38℃台の発熱があるが血圧は保たれている | バイタル、症状の部位、いつから出ているか |
| 咳が増えた、痰が多い | 酸素飽和度、発熱、痰の性状、食事中のむせ |
| 食欲の低下が数日続く | 摂取量、体重の推移、尿量、排便、内服の影響 |
| 嘔吐が続く/下痢が止まらない | 回数、内容、腹痛、血便、施設内の流行の有無 |
| 便秘が続き苦痛が強い、お腹が張っている | 最後の排便、腹痛、嘔吐、排ガスの有無、下剤の使用 |
| むくみが増えた | 体重の推移、息切れ、尿量、内服の変更 |
| 血圧がふだんより高い/低い(症状は軽い) | ふだんの値、測定した回数と条件、内服状況 |
| 眠れない、昼夜が逆転している、幻覚がある | いつからか、バイタル、内服の変更、日中の様子 |
| 転倒が増えた、打撲したが意識は正常 | 転倒の状況、けがの部位、抗凝固薬・抗血小板薬の内服 |
| 皮膚に発疹が出た | 出始めた時期、新しく始めた薬、範囲、呼吸の症状の有無 |
| 褥瘡(じょくそう)が悪化してきた | 大きさ、におい、滲出液、発熱、現在の処置 |
| 痛みが強くなった | 部位、強さ、使っている薬、いつから変わったか |
| 飲み込みが悪くなった | むせ、痰、体重の推移、発熱 |
※ 症状が急速に悪化する場合や、意識・呼吸・血圧に変化がある場合は、この表にかかわらず救急要請をご検討ください。
連絡する前に確認しておく情報
電話でのやり取りは、伝える順番を決めておくと格段に早くなります。医療や介護の現場では、状況・背景・評価・提案の順に伝える「SBAR(エスバー)」という型が使われています。ご家庭でも、次の8項目をメモしておくだけで十分です。
電話で伝える8項目
| # | 項目 | 例 |
|---|---|---|
| 1 | お名前・ご住所(施設名) | 「〇〇の家族の〇〇です」 |
| 2 | 連絡している方の立場 | 同居の家族、別居の家族、施設の夜勤責任者など |
| 3 | 症状(いつから・どの程度・変化) | 「夕方から38.5℃、今もぐったりしている」 |
| 4 | バイタル(測れた範囲で) | 体温、血圧、脈拍、酸素飽和度、呼吸の回数 |
| 5 | 意識と呼吸の様子 | 「呼びかけには答えるが、いつもより反応が遅い」 |
| 6 | 重要な持病と薬 | 抗凝固薬、糖尿病、てんかん、在宅酸素など |
| 7 | すでに行った対応 | 解熱剤を使った、体位を変えた、水分を取らせた |
| 8 | ご希望 | 今すぐ来てほしい/本日中に相談したい/次回訪問でよい |
ふだんから用意しておくとよいもの
- 連絡先を書いた紙:訪問診療、訪問看護、ケアマネジャー、ご家族の番号を電話機のそばに貼ります
- お薬手帳と、飲んでいる薬の一覧(頓服・貼り薬・注射を含む)
- 血圧計・体温計・パルスオキシメーター(お持ちの場合)と、記録用のノート
- ACP/DNARの方針を書いたもの:話し合った内容を紙に残しておきます
- 健康保険証・介護保険証・医療証の場所を家族全員が把握しておきます
オンコール体制とは何ですか?何を保証しないのですか?
オンコール体制とは、診療時間外に、電話でのご相談を受けられるようにしておく体制のことです。当院で訪問診療を受けている患者さんには、夜間・休日の連絡方法をご案内しています。
誤解が生まれやすい点なので、何を行い、何をお約束していないかをはっきりお伝えします。
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 行うこと | 電話でご相談をお受けし、状況をうかがいます |
| 行うこと | 必要と判断した場合に医師へつなぎ、対応方針を判断します |
| 行うこと | 電話での助言、翌日の臨時訪問、受診や救急要請のご案内など、適した方法をご提案します |
| お約束していないこと | 主治医本人へ常時直通でつながること |
| お約束していないこと | ご連絡のたびに医師がその場で訪問すること |
| お約束していないこと | いかなる時間帯でも即時に応答すること(訪問中などは応答が遅れる場合があります) |
| 前提 | 生命に関わる可能性がある症状は、当院への連絡を待たず119番を優先してください |
※ 夜間・休日は電話でご相談いただけるオンコール体制をとっています(主治医への直通をお約束するものではありません。緊急時は119番を優先してください)。
施設にご入居の場合の連絡の流れ
施設にご入居中の方については、ご家族から直接ではなく、まず施設のスタッフへお伝えいただくのが原則です。その場でご本人の様子を確認できるのは施設の職員だからです。
- 施設からの連絡は、状況を把握している責任者(夜勤責任者等)に一本化していただきます
- 連絡の前に、症状の経過、測れた範囲のバイタル、施設で行った対応、残薬の日数を整理します
- 救急搬送を決めた時点で、可能であれば同時に医療機関へもご連絡ください
- 搬送後は、搬送先、搬送の理由、経過をお知らせいただけると引き継ぎがスムーズです
施設の運用設計については、施設が協力医療機関を選ぶときの確認項目もあわせてご覧ください。
事前に家族で決めておくこと(ACPへ)
夜間の判断がいちばん難しくなるのは、ご本人の希望が共有されていないときです。「入院してでも治療を続けたいのか」「住み慣れた場所で過ごすことを優先したいのか」が分からないままだと、その場での判断がご家族の重荷になります。
ACP(人生会議)とは、これからの医療やケアについて、ご本人・ご家族・医療介護の関係者があらかじめ話し合っておく取り組みです。一度決めたら変えられないものではなく、体調やお気持ちの変化に合わせて何度でも話し合い直せます。
- 急な変化のとき、救急車を呼ぶかどうかの基本方針
- 心臓が止まったときに心肺蘇生を行うかどうか(DNAR)の希望
- 入院と在宅のどちらを優先したいか
- ご本人が判断できないときに、誰が代わりに意思を伝えるか
- 連絡する順番(誰に、どの番号へ)
当院では、診療のなかで折にふれてご希望をうかがっています。詳しくは看取り・ACPのご相談をご覧ください。
この記事のよくあるご質問
救急車を呼ぶか迷ったとき、先に在宅医へ電話してもよいですか?
生命に関わりそうだと感じる症状のときは、119番を優先してください。判断に迷うレベルであれば、救急要請と在宅医への連絡を同時に行っていただいて構いません。順番を気にして時間を使うことが、いちばん避けたい状況です。救急要請をしたあとに当院へお知らせいただければ、経過の情報を引き継ぐことができます。
オンコールに電話すると、必ず医師が来てくれるのですか?
必ず医師がその場で訪問することをお約束するものではありません。夜間・休日は電話でご相談いただけるオンコール体制をとっており、状況をうかがったうえで、電話での助言、翌日の臨時訪問、救急要請や受診のご案内など、そのときに適した方法をご提案します。主治医本人へ常時直通でつながることをお約束するものでもありません。
夜間に連絡するのが申し訳なく感じてしまいます。
ご遠慮なくご連絡ください。判断に迷う体調の変化は、早めに共有していただくほうが、結果として大きな受診や搬送を避けられることがあります。緊急性が低いと思われる内容であれば、翌日の日中にご連絡いただく形でも構いません。どちらか迷うときは、まずお電話でお聞かせください。
まとめ
- 生命に関わりそうだと感じたら119番が優先。迷うレベルなら同時に連絡してください
- 意識・呼吸・麻痺・強い胸痛・大量出血は、経過を見ずに救急要請を検討します
- 発熱、食欲低下、むくみなどは、バイタルと経過を添えて在宅医へご相談ください
- 電話の前に8項目を整理し、連絡先は紙に書いて貼っておきます
- オンコールは電話でのご相談を受ける体制で、直通や訪問をお約束するものではありません
- 夜の判断を軽くするのは、事前のACP(人生会議)です