北海道の在宅医療

北海道の冬、高齢者の通院はなぜ大変か

積雪と路面凍結は、通院そのものを見送る理由になります。冬の負担、備え、訪問診療の動き方を整理しました。

積雪した北海道の住宅街の道路|冬季も継続する旭川市の訪問診療

北海道の冬に通院が難しくなる理由は、雪の量そのものよりも、路面凍結による転倒、除雪待ちで延びる移動時間、そして送迎するご家族の負担にあります。持病のある高齢の方にとっては、通院を1回見送ることが体調の悪化につながることもあります。

  • 冬の通院の壁は凍結・除雪待ち・寒暖差の3つです
  • 心疾患・脳血管疾患・呼吸器の病気・ヒートショック・転倒が冬に増えやすくなります
  • 備えるのは暖房、停電、薬の残り、連絡先の掲示の4点です
  • 訪問診療は冬季も継続します(悪天候時は日程調整のご連絡をすることがあります)

結論:冬の通院で何がいちばん負担になりますか?

ご家族からうかがう話をまとめると、負担の中心は「雪が積もること」そのものではありません。玄関から車まで、車から病院の入口までの数十メートルが、いちばんの難所になります。

圧雪された路面はでこぼこで、その上に薄い氷が張ります。杖や歩行器では踏ん張りがきかず、付き添う側も自分の足元を見ながら支えることになります。この数十メートルを何度も往復することを考えて、通院そのものを見送る方が増えるのが北海道の冬です。

北海道の冬、通院はなぜ大変になるのですか?

理由を分けて整理すると、対策も見えてきます。

北海道の冬に通院が難しくなる主な要因
要因通院への影響考えられる対応
路面の凍結転倒、骨折。付き添う家族も転びやすくなります滑り止め、時間帯の選択、外出の回数を減らす
積雪・除雪待ち玄関前や駐車場が塞がり、出発できません除雪の担い手を決めておく、事前に確認する
渋滞・通行止め移動時間が平常時の2倍以上になることがあります予約時間の余裕、悪天候日の予定変更
寒暖差血圧の変動、心臓や血管への負担が増えます防寒、暖かい時間帯の移動、車内の温度
日照時間の短さ夕方以降の視界が悪く、帰路が危険になります午前中の受診、暗くなる前の帰宅
待合室での長時間体力の消耗、トイレの不安、感染症のリスク受診回数の見直し、在宅での診療への切り替え

※ 一般的に想定される事柄を整理したものです。地域や年によって状況は大きく異なります。

路面凍結による転倒

高齢の方の転倒は、骨折から寝たきりにつながることがあり、冬にもっとも避けたい出来事のひとつです。とくに、抗凝固薬(血をさらさらにする薬)を飲んでいる方が頭を打った場合は、その場では元気に見えても注意が必要です。頭を打ったあとに、いつもと様子が違う、反応が鈍い、繰り返し吐くといった変化があるときは、119番を優先してください。

移動時間と待ち時間が延びる

降雪の朝は、除雪車を待つ時間、車の雪下ろし、渋滞が重なります。予約時間に間に合わせるために早く家を出れば、それだけ寒い時間が長くなります。診察そのものは10分でも、往復と待ち時間を含めると半日仕事になるのが冬の通院です。

送迎するご家族の負担

送迎のために仕事を休む、朝の除雪を済ませてから迎えに行く、といった負担が冬は重くなります。介護をされる方が体調を崩すと、療養の体制そのものが揺らぎます。ご本人の通院の可否だけでなく、支える側が続けられるかどうかも、在宅療養を考えるうえで大切な判断材料です。

冬に体調を崩しやすい病気

冬は、次のような病気や状態に注意が必要とされています。持病のある方は、ふだんから主治医と対応を相談しておくと安心です。

冬季に注意したい主な病気・状態と、家庭で気をつける点
病気・状態冬に注意が必要な理由家庭で気をつける点
高血圧・心疾患寒さで血管が収縮し、血圧が上がりやすくなります室温の管理、血圧の記録、薬を切らさない
脳血管疾患血圧の変動が引き金になることがあります急な寒暖差を避ける、症状が出たら119番
ヒートショック暖かい居間と寒い浴室・トイレの温度差が負担になります脱衣所と浴室を温める、湯温を上げすぎない
心不全の悪化感染症や塩分・水分の変化で悪化しやすくなります体重の増減、むくみ、息切れの変化を見る
肺炎・誤嚥性肺炎空気の乾燥と感染症の流行が重なります口腔ケア、加湿、食事中のむせに注意する
COPD・喘息冷たい空気で気道が刺激されますマスク、室内の空気、吸入薬を切らさない
脱水・便秘のどの渇きを感じにくく、水分が不足しがちですこまめな水分、排便の記録
転倒・骨折凍結路面と厚着による動きにくさが重なります足元の環境整備、無理な外出を避ける
低体温症暖房の不調や停電が命に関わります予備の暖房手段、室温計の設置

※ 一般的な注意点をまとめたものです。個別の対応は、かかりつけ医または当院へご相談ください。

雪に覆われた北海道の生活道路|降雪期も休まない訪問診療
除雪の入る前の生活道路。歩行での外出が難しくなります

冬の在宅療養で備えておくこと

冬に備えることは、大きく分けて「暖房」「停電」「薬と食料」「連絡先」の4つです。

暖房と室温

  • 居間だけでなく、寝室・脱衣所・トイレ・廊下の温度差を小さくします
  • 室温計を、ご本人が過ごす部屋に置きます(体感だけに頼らないためです)
  • 暖房器具の点検と、灯油の残量の確認を、寒くなる前に済ませます
  • 電気を使わない暖房手段(カセットボンベ式の器具、湯たんぽ、毛布)を用意します

停電への備え

  • 在宅酸素、人工呼吸器、吸引器などを使用している方は、停電時の対応を機器の提供事業者にあらかじめ確認します
  • 予備のボンベやバッテリーの置き場所を、家族全員が分かるようにします
  • 懐中電灯、携帯電話の予備バッテリー、乾電池を、取り出しやすい場所にまとめます
  • 避難が必要になった場合の行き先と移動手段を、ケアマネジャーと相談しておきます

薬と食料の備え

  • 薬は残りが7日を切る前にご連絡ください。悪天候で受け取りが遅れることがあります
  • お薬手帳と、飲んでいる薬の一覧を、持ち出せる場所に置きます
  • 水と、火を使わずに食べられる食品を数日分用意します
  • 冷蔵が必要な薬(インスリンなど)の停電時の扱いを、薬局に確認しておきます
連絡先は「紙で」貼っておく

停電や通信の不調で、スマートフォンの連絡先が使えないことがあります。かかりつけ医、訪問診療の連絡先、訪問看護、ケアマネジャー、ご家族の電話番号を紙に印刷し、電話機のそばや冷蔵庫に貼っておくことをおすすめします。

訪問診療は冬にどう動くのですか?

訪問診療は、患者さんが外に出る必要がないという点で、冬にこそ意味が大きくなります。医師が移動を引き受けるため、凍結路面を歩く場面がなくなるからです。

当院は冬季も訪問診療を続けます。ただし、大雪や吹雪、路面の凍結によって道路状況が悪いときは、到着が遅れたり、日程を組み替えたりする場合があります。その際は事前にご連絡します。

玄関前の除雪へのご協力のお願い

安全に停車して玄関まで伺うために、次の点にご協力をお願いしています。

  • 車を停められるスペースを1台分、確保していただけると助かります
  • 玄関前と、車から玄関までの通路の除雪をお願いします
  • 屋根からの落雪が予想される場所は、あらかじめお知らせください
  • ご自身での除雪が難しい場合は、遠慮なくご相談ください。ほかの方法を一緒に考えます

悪天候のときのご連絡

暴風雪の警報が出ている日など、安全に走行できないと判断した場合は、訪問の日程を変更させていただくことがあります。変更が必要なときは、事前にお電話でご連絡します。

ご家庭の側でも、道路が塞がっている、駐車できない、といった事情があるときは、早めにお知らせください。無理に来ていただく必要はありません。

なお、夜間・休日は電話でご相談いただけるオンコール体制をとっていますが、天候によって訪問に時間がかかる場合があります。意識障害、強い呼吸困難、突然の麻痺、胸の強い痛み、大量出血などは、天候にかかわらず119番を優先してください。

道北ならではの「距離」の問題

旭川市内であれば、移動そのものは大きな問題になりにくい距離です。一方、名寄市や上川管内の町村となると、片道の移動に相応の時間がかかります。冬はこれがさらに延びます。

そのため当院では、名寄市とその周辺については、訪問の頻度やオンライン診療の併用を含めてご相談させてくださいとお伝えしています。「毎週伺えます」とお約束することが難しい距離だからです。伺える範囲の考え方は、対応エリアのご案内上川・道北エリアの訪問診療で、中心エリア・対応エリア・個別相談の3区分に分けてご説明しています。

また、地域によっては、そもそも在宅医療を行う医療機関の選択肢が限られます。「エリア外と言われた」というご相談も少なくありません。当院で伺えない場合でも、地域包括支援センターや市町村の窓口など、次に当たる先をご案内できることがあります。

冬はオンライン診療の併用も検討できます

オンライン診療は、対面の訪問診療を置き換えるものではありません。ただし、悪天候で訪問の間隔があいてしまう時期に、様子を確認する手段としては有効です。

ご本人だけで操作していただく必要はなく、ご家族や施設のスタッフ、訪問看護師に同席していただく形で実施できます。当院は厚生労働省の「オンライン診療の適切な実施に関する指針」に沿って実施しており、医師が必要と判断した場合は対面診療に切り替えます。詳しくはオンライン診療のご案内をご覧ください。

この記事のよくあるご質問

大雪の日でも訪問診療に来てもらえますか?

冬季も訪問診療を続けます。ただし、大雪や吹雪、路面の凍結によって道路状況が悪いときは、到着が遅れたり、日程を組み替えたりする場合があります。その際は事前にご連絡します。安全に停車して玄関まで伺えるよう、駐車スペースと玄関前の除雪にご協力いただけると助かります。緊急性が高い症状のときは、天候にかかわらず119番を優先してください。

冬のあいだだけ訪問診療を利用することはできますか?

季節を区切ったご利用については、病状と通院の状況をうかがったうえで個別にご相談します。冬のあいだだけ通院が難しいというご相談もいただきます。ただし、訪問診療は継続的に診ることで変化に気づける面があるため、通年での利用のほうが適している場合もあります。まずはお電話で今の状況をお聞かせください。

停電したとき、在宅酸素や医療機器はどうすればよいですか?

医療機器を使用している方は、停電時の対応をあらかじめ機器の提供事業者に確認しておいてください。予備のボンベやバッテリーの場所、使用できる時間、連絡先を、ご家族と介護に関わる方全員が分かる場所に掲示しておくと安心です。あわせて、電力会社への「重要施設」等の届出や、災害時の避難先についても、ケアマネジャーとご相談ください。

まとめ

  • 冬の通院の壁は玄関から車まで、車から病院の入口までの数十メートルにあります
  • 冬は心疾患・脳血管疾患・肺炎・ヒートショック・転倒に注意が必要です
  • 備えるのは暖房、停電、薬と食料、紙に書いた連絡先の4点です
  • 訪問診療は冬季も継続します。駐車スペースと玄関前の除雪にご協力ください
  • 道北は距離があるため、訪問の頻度とオンライン診療の併用を含めてご相談ください
  • 天候にかかわらず、緊急性が高い症状は119番を優先してください
※本記事の内容は一般的な説明であり、個別の診断・治療方針を示すものではありません。持病のある方の冬の過ごし方については、かかりつけ医または当院へご相談ください。

記事を読んでお困りの方へ

ご家族だけで抱えず、状況をお聞かせください

記事の内容は一般的な目安です。実際の症状や療養環境に合わせた判断は、医師や関係職種と相談しながら進めます。

訪問診療のご相談 0166-74-3774

新規のご相談はお電話で受け付けます(受付時間はお問い合わせください)。メールは緊急のご相談には使用しないでください。

夜間・休日は電話でご相談いただけるオンコール体制です。主治医への直通や訪問を保証するものではありません。緊急時は119番を優先してください。詳しい連絡方法